2023/04/10

セブン銀行のATMがグッドデザイン賞に選ばれたわけは?

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セブン銀行の新型ATM(第4世代)は2022年度「グッドデザイン賞」を受賞しました。みなさんはグッドデザイン賞をご存じでしょうか?世界4大デザイン賞の一つに数えられるこの賞は、1957年に開始され、外観の美しさだけでなく、社会課題に対する取組みや将来に向けた提案性など、その商品・サービスのコンセプトも評価の対象となっています。

では、セブン銀行の新型ATMはどうでしょうか。「ATMは現金の入出金さえできれば、デザインの良し悪しは関係ないのでは?」とも思えます。しかし、新型ATMがグッドデザイン賞に選ばれるほど、デザイン性や機能性にこだわったのは何故か・・・?

今回はATM+のプロジェクトマネージャーである水村洋一さんに、ATM+に込めた想いやグッドデザイン賞受賞の理由について伺いました。

目次

    ATMでの体験=お店の「接客の質」や「清潔さ」

    「コンセプトはズバリ、『ATM+(プラス)』。ATMとしての利便性をさらに磨き上げることに加え、“お客さまニーズの変化に応える機能を+(プラス)すること”を開発の軸に据えました」と水村さん。既存機能の向上を進めてきた第1~3世代のATMとは異なり、第4世代のATM+は、キャッシュレス決済の広がりに伴うニーズの変化に応えるため、「本人確認書類の読取り」や「生体認証」といった全く新しい機能が+(プラス)されました。

    この「ATM+」というコンセプトに行き着くまでには、さまざまな紆余曲折があったといいます。「キャッシュレス決済の広がりを踏まえ、既存ATMを低コストにして、且つさらにシンプルなモデルにしようか、という話も出ました。またリッチ版とシンプル版の2つのモデルを開発する案も出ましたね」と水村さん。では、なぜ既存の機能に加えて新機能も+(プラス)したATMを開発することになったのでしょうか。

    「シンプルにいえばお客さまにもっと『便利だな』『使いやすいな』と感じていただける価値を多く提供したいからです。加えて、私の解釈では、『ATMでの体験』というのはお店でいうところの『接客態度』や『お店の雰囲気』などに該当します。ATMで良質な体験を提供できれば、お店のようにリピーターになってくれる方も増える。私はそう考えています。単純なコスト削減のような提供者側の理論にせずお客さまに喜んでいただける、セブン銀行らしい高品質のATMを作ろうと考え、新機能も追加したATM+を開発しました」

    “誰一人取り残されない”という信念がグッドデザイン賞受賞につながる

    冒頭で触れたとおり、ATM+は2022年度「グッドデザイン賞」を受賞しました。受賞時の感想について、水村さんは「ATM+にはさまざまなこだわりを詰め込みました。ATM+はこれまでで最も大胆にデザインを革新したモデルだったので、外部からも評価いただけたのは素直にうれしかったですね」と話します。

    今回の受賞理由として、おもてなしを感じさせるATM+のユニバーサルデザインもさることながら、“誰一人取り残されない”という考え方から発想したさまざまな機能や、環境への負荷低減なども挙げられています。

    「“誰一人取り残されない”という想いは、例えばパソコンやスマートフォンの操作が苦手な方にも使いやすいマイナポイントの申込みや口座開設などの手続きに対応している点にも表れています。とにかく“ATMをメカメカしくない、優しい存在にすること”にこだわりました。また、消費電力およびCO2排出量は、従来比約40%減。人にも社会にも環境にも優しい存在になりたい、と考えました」と水村さん。

    ATM+の取引画面の背景は全12パターン。運が良ければ…?

    もちろん、今回の受賞はATM+のデザイン性も高く評価されてのこと。デザインのキーワードは「Cocoon(コクーン:繭)」。繭は命を守る、柔らかい繊維でできた覆いですね。ITやデジタルに苦手意識がある方を、繭玉で優しく包むような存在になりたい。そんな思いから、細かな部分に木目調のデザインを取り入れたり、生の楽器の音を操作音に採用したりしているそうです。

    最後に余談ながら、ATM+を見かけたときに、つい友人に教えたくなる「ATM+トリビア」について水村さんに伺いました。

    「実は、ATM+の取引画面の背景は季節やイベントに応じて12パターンを用意しています。例えば、クリスマスにはサンタクロースが、春には桜が表示されます。その中に、一定の確率で出会える隠し演出も実はあるんです。素敵な偶然に出会えたり、予想していなかったものを発見することをセレンディピティ、というのですが、メンバーからそういった演出を入れたらよりお客さまに楽しんでもらえるのではないか、と提案され、すぐに取り入れました(笑)」

    水村さんが教えてくれた「ATM+トリビア」は、まだあります。その他の「ATM+トリビア」については、今後公開する記事でご紹介しますね。